●1624●『「蟹工船」を読み解く』『目と耳と足を鍛える技術』『フェルメール全点踏破の旅』『謎解き フェルメール』『平頂山事件とは何だったのか』『日本人はなぜ日本を愛せないのか』『日本を思ふ』
2009年3月6日 22:28:40
次の公演のことばかり考えている。
そりゃそうだ。それが今のぼくの第一義の表層になければどうしようもない。
それは、劇団員だって同じだろう。
全ての私事を後回しにして、そればかり考えている。みんな同じだ。
見沢知廉三回忌公演の準備を思い出す。とんでもない日々だった。
驚くほどたくさんの問題があり、それらが片付く前に次の問題が積み上げられた。
ぼくと、市川未来(ころすけ)と、ゆーこちゃんと3人で動き回った。
汗だくになって、歩き回った。私事を後回しにして、
とはいえ、なかなか私事を後回しにすることはできない。
彼氏や、彼女がいる劇団員もいるだろう。
家族のことを考えなければならない劇団員もいるだろう。
仕事をいつも後回しにはできない劇団員もいるかもしれない。
お金の心配をしなければならない劇団員もいるだろうし、
ぼくには計り知れない悩みや問題を抱えている劇団員もいるかもしれない。
それでもみんな「ここ」にやってくる。
そして、ぼくは次の公演のことばかり考えている。
そりゃそうだ、と言う以外の理由は、ない。
そうだからそうなんだ。みんなと同じにそうなんだ。
みんなが「ここ」にやってくる。
【全部、鈴木さんから】
『「蟹工船」を読み解く』鈴木邦男(253)
『目と耳と足を鍛える技術』佐野眞一(174)
『フェルメール全点踏破の旅』朽木ゆり子(250)
『謎解き フェルメール』小林頼子(111)
『平頂山事件とは何だったのか』平頂山事件訴訟弁護団(189)
『日本人はなぜ日本を愛せないのか』鈴木孝夫(251)
『日本を思ふ』福田恒存(396)
先日、鈴木さんから送られてきた大量の本を片っ端から読んでいる。
どんどん読んでいる。
鈴木さんの新著『「蟹工船」を読み解く』も読み終えた。
本書の感想は、改めて書こう。
もう20年も前に、言葉を選択した。
何かを書きたい、と思っていた。
ペン一本でたちたいと思っていた。そのために知りたかった。
世界の全てを知りたかった。宇宙の全てを知りたかった。人間の全てを知りたかった。
どんな本を読んでも、知りたいことが書いてある本はなかった。
ぼくは、なぜ人間なのか。考えることを考えるという深淵に嵌まり込み、
何も知らないぼくを絶望し、まさに絶望という言葉がぴたりの絶望をし続けていた。
なにもできない。なにも知らない。
あの頃と何かが変わっただろうか。
この20年で読んできた6000冊は、ぼくに何かを遺しただろうか。
何にも変わってないじゃないか。
相変わらず何にも知らない。何にも出来ない。
変わったのは、
何かを知ってるふりができるようになり、
何かが出来るふりができるようになっただけだ。
この二日で読んだのは、1624ページ。
読書時間にすれば、8時間くらいのものだろう。
読みながらも次の芝居のことを考えている。
昨日、稽古場の前で立ち止まってしまった理由がはっきとわかった。
帰りたい、と、ぼくの体のどこかで叫んでいた、どこかがわかった。
昨日から考え続けていた闇の想念も、明日の稽古場で明るみに出るかもしれない。
劇団員一人ひとりの顔を思い浮かべ、彼らに言葉を尽くす。
一冊の本を読み終え、正座していた足を崩し、彼らに言葉を選ぶ。
「ころすけ、あのね、」と長い時間を語りかける。
「いなほ、あのね、」と顔を思い浮かべる。
「あゆ、あのね、」とぼくを伝える。
「けーこちゃん、あのね、」と問題を提起する。
「なおと、あのね、」と一行の方程式を伝える。
「ゆう、あのね、」と彼の人生を思う。
「さとまり、あのね、」と彼女をトレースする。
「あゆみちゃん、あのね、」と劇団再生を突きつける。
「ゆーこちゃん、あのね、」とわがままを言う。
語りかけ、足の痺れが取れたら、また一冊を取り出し、正座する。
考え続け、本を読み続け、語り続け、雨。