●549●『世界教養全集13』

2009年4月14日 00:13:22

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「肩こりを知らずに死んだインド人青年が関わったとされる或る事件の101章」

という映画を観た。
普段、劇場で映画のパンフレットを買うことはないけれど、
何故かその映画のパンフレットは、買った。
本編が始まるまでの間にパンフレットを読んだ。
監督の名前は知らなかった。音楽は、『LEON』を書いたエリック・セラだ。

タイトルにある「インド人青年」だろう。
インド人然としたフィギュアがついた携帯ストラップを買った。
そのストラップを携帯につけようと四苦八苦している時に映画は始まった。

周りの観客がすすり泣いていた。嗚咽と言ってもいい。激しく泣いていた。

インド人青年が関わったチャンネル盗難事件。
テレビの10チャンネルを盗み、
青年は、否認していたけれども、状況証拠は明らかに彼を犯人だと指し示し、
そして、10チャンネルから、彼の指紋が、出た。決定的だ。
だが、弁護団は応戦する。

「あの時間、10チャンネルを触ったのは彼だけではない!」
「月曜日午後8時。多くのインド人がテレビと向き合い、10チャンネルを触った」

インド人青年は、獄中。
法廷では、検察弁護両団が驚きの論理展開を繰り広げる。
盗まれた10チャンネルは未だ発見されていない。
インド中の人々が10チャンネルのないテレビでの法廷中継に釘付けだ。

「なぜ彼は10チャンネルを盗んだのか」という本が出版された。

カメラは、獄中の彼を捕らえ続け、
字幕に「肩こりを知らないということが、犯人の証拠だ」と流れ始めた。
その時だ。客席中からすすり泣きが聞こえ、嗚咽が響き、みんなが泣いた。

弁護団の論証は見事だった。
けれども、彼は死刑になった。
10チャンネルは見つからない。
インドから10チャンネルが失われ、彼は、こうして映画になった。

そんな夢だった。赤を基調とした牢獄。青の法廷。黄色のインド人たち。
目が覚めて、何もかもこうして覚えていることに
夢だったのか、現実だったのか、一瞬判断がつかなかった。

『世界教養全集13』
・「世界文学三十六講」著/クラブント_訳/秋山英夫
・「文学とは何か」著/G.ミショー_訳/斎藤正二
・「文学―その味わい方」著/A.ベネット_訳/藤本良造
・「世界文学をどう読むか」著/ヘルマン・ヘッセ_訳/石丸静雄
・「詩をよむ若き人々のために」著/C.D.ルーイス_訳/深瀬基寛

夢の話と読んだ本の話とに何の関係もない。
暗喩でもフリでもなんでもない。

鈴木さんに頂いた「世界教養全集」を読んでいる。
手に取った順に読んでいる。13巻は、文学と読書という内容。
一日で読みきった。面白くてやめられなかった。
鈴木さんはこんなに面白い本を読んでいたのか。
こんなに面白い内容の本があったのか。知らなかった。読めて良かった。

具体的な感想なんかない。
5編が収録された一冊。
どれもこれもが秀逸。珠玉。感想なんかがあるはずない。
ただ面白い。やめられないほど夢中になれる。それだけだ。

この『世界教養全集』全38巻が、8000円ということだ。
驚くどころか、誰かがどこかで間違えたんじゃないかと思う。
10倍の価値は充分にある。100倍の価値もある。
50年後100年後に残さねばならない文学が、きちんと収録されている。
鈴木さんが読んできたように、そしてこうしてぼくが読んでいくことで、

言葉が残っていく。