●1886●『世界教養全集15』『世界教養全集3』『現代映画、その歩むところに心せよ』『小林秀雄全作品11・ドストエフスキイの生活』
2009年5月7日 22:30:54
そうなんだ。ほんとに。
やめようと思えばいつでもやめられる。
さぼろうと思えばいつでもさぼられる。
久しぶりにエンゲルスを読んだ。付箋だらけになった。雨か。
エピクテトスだったか。
君自身と語れ。独りで歌え。コーラスの中に隠れるな。
君が誰であるかわかるように、
人に笑われ、人に見られ、人にゆすぶられてみろ。
そんな言葉を思い出した。
本を読めば読むほど、足元がぐらぐらと揺れる。
不確かな思惟の渦が呟く。
やめようと思えばいいんだ。さぼればいいんだ。
もう20年も30年も収まることのない、緩やかで穏やかなその思惟の渦は、
いつもそう呟く。やめれば楽になる、と。
一日くらいさぼったって大丈夫だよ、一日くらい、一日くらい、と。
待合の長椅子に座って、毛沢東を読んだ。付箋だらけになった。
会ったことがないけれど、毛沢東とは仲良しな気がした。
年齢を超えて、楽しく話ができる。毛沢東と楽しく話した。
だから形而上が好きなんだ。この場所が好きなんだ。
毛沢東の政策や、中国共産党や、その功罪なんかどうでもいい。
毛おじさんの形而上。楽しそうな矛盾だらけの形而上。
傘を持たずに出かけ小糠雨。
そういえば、昨日もその前日も雨に、濡れた。
そりゃ傘は、ある。あるけれども、さすのが億劫だ。めんどくさい。
もう何年も使っているぼろぼろのトートには、一冊の古本。
倉田百三が鈴木大拙が芥川が、嬉々と言葉を並べ、
三木清と亀井勝一郎が、恥ずかしげもなく語る「愛」にようやく反論を試みることができた。
数日の雨、最近書店に行くことが少なくなった。
自宅に本が山積みになっているし、その山を読み崩す前に本を頂く。
読む速度よりも早く山が高くなっていく。
思想大系、教養全集、哲学書、読んでいるのはそのどれかだ。
小説を読むことが少なくなった。新刊書に興味を惹かれる事が少なくなった。
これが最後の一冊だ。これが最後のページだ。この一行が人生最後の一行。
帰り道、雨に濡れながら、
やめようと思えばいつでもやめられる。
さぼろうと思えばいつでもさぼられるんだ、そんなことを思った。
帰り着き、本を開くと数時間、気絶するように眠ってしまった。
このやろー、起きやがれ! 今起きないと神罰が下るぞ! 起きろ起きろ!
本の読みすぎによる思想的な足物との不安定さではなく、
あきらかに肉体的に目覚めない体にその因を発する不安定さで、頭がぐらぐらとする。
起きろ! 体の奴! あと10秒でしゃんとしないと、神罰だ!
コーヒーでも淹れるか、と
原稿用紙を開き、万年筆に月夜を満たす。
『世界教養全集15』
(421)
・「空想から科学へ」著/F.エンゲルス_訳/宮川実
・「共産党宣言」著/K.マルクス・F.エンゲルス_訳/宮川実
・「職業としての政治」著/M.ウェーバー_訳/清水幾太郎・清水礼子
・「矛盾論」著/毛沢東_訳/竹内好
・「第二貧乏物語」河上肇
『世界教養全集3』
(592)
・「愛と認識の出発」倉田百三
・「無心ということ」鈴木大拙
・「侏儒の言葉」芥川龍之介
・「人生論ノート」三木清
・「愛の無常について」亀井勝一郎