『ディドロ』【人類の知的遺産41】
2016年2月1日 16:58:10
恐ろしき知の空間
18世紀の知の巨人、ディドロ。
知れば知るほどその巨大さに息を飲む、巨人。
文豪ゲーテが、ディドロに触発されて長い間書きあぐねていた最高傑作『ファウスト』の白眉第二部を一気に完成させたことは有名な逸話だ。日本でもまたしかり。大岡昇平の『俘虜記』は、ディドロの『逆説・俳優について』を熟読し書かれた。また、歴史家石原保徳が『大航海時代叢書』を書き綴ったのもディドロ の影響だ。いや、世界中の知の、思想の、文学の、芸術の、政治の、経済の、巨人たちがみんな影響を受けたと言っても過言ではないだろう。
人類が憧れ焦がれ続ける知の最高の高みへ一番近づきえた一人だろう。彼が得た恐ろしいほどの知識は、惜しみなく世界に与えられたのだ。
他者の中で
ディドロが好んだ自身の言葉で言えば、
「切っても切ってもその切片が新しい生命をもって増殖し続けるあのポリープのように、他者の中で生き続けている」のだ。
ディドロが生きた18世紀、時代の思想の状況は『神経の回復』という言葉で規定される。回復ということは、それ以前に当然「衰弱」の時代がある。ヨーロッパの「神経の衰弱」とは、禁欲主義と神秘主義、ペシミズムの台頭、現世に対する希望の喪失、努力に対する信頼の喪失、探求への絶望、無謬の啓示を求める声、国家の幸福への無関心、魂の神への回心、ということだ。似ていないだろうか?今の日本に。
ディドロは、そんな神経が衰弱していた世界に希望を与えたのだ。その知力で。ディドロは、たくさんの書物を書き残している。それが今ようやく日本で花開くのではないか。と、思うのは、希望的観測すぎるだろうか?
ディドロの演劇的足跡
日本の演劇もディドロ い大きな影響を受けている。今の時代、そのことはあまり知られてはいないが。
『盲人書簡』、『ソクラテスの弁明』、『聾唖者書簡』、『劇作論』、『ダランベールの夢』、『修道女』、『ラモーの甥』、『俳優に関する逆説』、
どうだろう。ピンとくるではないか。
ひたすら続けている全集読み。この人類の知的遺産全80巻も折り返しを過ぎた。年内に読みきってみたいが、あと39巻、ちょっと難しいか。
なんにせよ一歩ずつ、知の高みへ。