『草木塔』種田山頭火
2007年5月23日 00:53:59
時間に追われたり、
そして、自らの肉体に脅かされたり。
と、やはり真夜中。
フランス映画『太陽がいっぱい』
アラン・ドロン。
何故か、似合う、
『草木塔』
種田山頭火
落ちかかる月を観てゐるに一人
まつすぐな道でさみしい
しぐるるや死なないでゐる
生き残つたからだ掻いてゐる
どうしやうもないわたしが歩いてゐる
うしろすがたのしぐれてゆくか
いつまでも旅することの爪をきる
月が昇つて何を待つでもなく
ひつそりかんとしてぺんぺん草の花ざかり
けふもいちにち風をあるいてきた
月夜、あるだけの米をとぐ
ふくろふはふくろふでわたしはわたしでねむれない
いつでも死ねる草が咲いたり実つたり
この道しかない春の雪ふる
草のそよげば何となく人を待つ
やつぱり一人はさみしい枯草
そこに月を死のまへにおく
このみちをたどるほかない草のふかくも
おちついて死ねさうな草枯るる
つぎつぎに力をこめて力と書く
名もない草のいちはやく咲いてむらさき
濁れる水の流れつつ澄む