『潜入捜査官』著/ウィリアム・クウィーン_訳/小林宏明
2007年11月28日 21:33:00
発熱したときに、いつも同じ夢を見る。
夢の中で、
目を覚ますと、
周りが真っ赤なことに気がつく。
そして、その赤は自分にまとわりついてきているように感じ、
目をこらす。
肌に触れると、
とても冷たくて、ゆえにびっくりするほど熱く、
足が前に動く。
ねちゃねちゃした感じというか、
べたべたした感じというか、
どうにも表現できない感じ。
手探りの手が何かを突き破り、
からだが何かを突き破る。
「外」にでた感じがして、
振り向くと、巨大なトマトが。
(なんだ、トマトの中にいたのか)
そう思い一息つくと、また回りは真っ赤になっている。
子供の時から熱を出すと、
同じ夢を見てきた。
先日、友人T君が渡してくれた本。
『潜入捜査官』
著/ウィリアム・クウィーン_訳/小林宏明
ドキュメントです。
ノンフィクションというより、ドキュメント文学。
凶暴なモンゴルズというバイカー集団に
一人で潜入し、捜査をしていく捜査官の物語。
それが、小説以上にドラマティックで、
人間が描かれており、
生々しさとニヒリズムが交錯し、
わくわくどきどき、笑いあり、涙ありという
感情の起伏はほとんどなく、
事実の連続は、冷たい恐怖をずっと隣に存在させている。
ベトナム帰還兵の問題から、
現代のアメリカが抱えるバイオレンス。
エンジェルズとの関係とドラッグ。
仲間しか信用しないという凶悪な集団のなかに、
一人で身分を隠し潜入するという事は、
どれほどの激しい感情が必要か。
しかし、それは表面には描かれてはいない。
事実の積み重ね。
2年以上にわたる経験した事実。
誰か、本作品を映画にしたらどうか。
自分には、映像が目に浮かぶが。
友人T君は、これを読んで何を思ったのか。
彼の感情をトレースしてみようとする。
彼は、何を思って、自分にこの本をすすめたのか。
高木が他人にキレて、
そいつに向かって行ったときに、
後ろから簡単に捕まえ、
「タカキさん、軽いっすねー」と笑っていた友人T君。
社会性の欠如が著しい彼。
「社会性の欠如って、どういうことなんすか」と
へらへら笑う友人T君。
意味もなくでたらめの京都弁でメールをしてくる彼。
用件は、件名に入力し、本文のないメールが得意な彼。
多動性障害の気がある友人T君。
何かいたずらをしていないと気がすまない彼。
彼は、この本を読んで何を思ったのか。