『戦後文学の思想』【戦後日本思想大系13】編集・解説_高橋和巳

2007年12月12日 23:53:52

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全16巻の「戦後日本思想大系」も13巻を読了。
コード名「鈴木邦男」
この全16巻を読み終えて、
次が、「現代日本思想大系」35巻、
んで、「近代日本思想大系」34巻、
最後、「日本思想大系」67巻。

来年一年で読み終えそう。
その次に新たなプロジェクトが始動しなければ、
「埴谷雄高」「ドストエフスキー」にじっくりと。

寝ても醒めても本を読んでおり、
おまけに周囲では読書の話題が盛り上がり、

今日目が覚めると、
不思議な感覚に陥っていた。

(ここは、本の中だ・・・)

全てが、

すでに書かれているという、今、現実。
そして、目覚めたばかりの高木という現象を
読んでいる「目」を感じ、

(あっ・・・)

そうだ、本を読むんだった。
と、思ったことも、一つの高木という現象で、
それは、誰かの手によって書かれている、

過去で、

書かれているものを、
今目覚めた高木が現象として認識していく、
という、時間の可逆性を特質として持つ書物以上に、
その可逆性を実感し、

今は、すでに、過去だ、

と、呟いてみた。

『戦後文学の思想』【戦後日本思想大系13】
編集・解説_高橋和巳

あっという間に読み終えた13巻。
タイトルと目次から、わくわくで、
スキップで読み始めたのですが・・・

これがねえ、
折り合いをつけるまで意外に時間がかかったんですよ・・・

というのも、
「戦後文学」というタイトルから、
自分が好きな文学作品や作家、
戦後という時代の顕彰とこれからの可能性、
みたいな論点かと思いきや、

まず、大きな論点として、
「戦時中の文学者の立場」というものが論じられ、
それは、
作家という職業として、
戦争に賛成したか、しなかったか、
積極的に賛成したか、消極的賛成だったか、
積極的否定だったのか、沈黙したか、
という個人の立場からの問題提起があり、

その中には、ある作家を名指しで批判していく姿勢があり、
その批判は、論争に発展し、

「転向論」に突入。
転向という思想的、文学的意味と価値。
その否定と肯定。

そして、「政治論」に当然なるわけで、
政治と文学というよりも、
政治の中の文学のあり方、という、
政治と文学は切れるものではない、というのが
大前提にある論点は、
異様は迫力で迫ってきます。

編集は、ニヒリスト高橋和巳です。

この先をどう編集したのか、と、
楽しみに進むと、

実験小説、西欧の小説との比較文学論、
エロスと文学、性の扱い、チャタレイ裁判顛末、
哲学の発生と言語、記号論、と、

その内容は、まさに縦横無尽の十字砲火。
目がくるくると嬉しがる。

読書という完璧な愉悦。
読書という完全な快楽。

あっ、まただ、

ここは、もしかしたら、本の中・・・


編集・高橋和巳
解説・「戦後文学の思想」高橋和巳

【廃墟の中から】
「如是我聞(一)(二)」太宰治
「可能性の文学」織田作之助
「歌声よ、おこれ」宮本百合子
「滅亡について」武田泰淳
―座談会―「文学者の責務」
・・・荒正人・小田切秀雄・埴谷雄高・平野謙・佐々木基一・本多秋五
「『戦争体験』論の意味」橋川文三

【政治と文学】
「そっくりそのまま」中野重治
「政治と文学(二)」平野謙
「目的は手段を浄化しうるか」埴谷雄高
「従属精神への挑戦」秋山清
「組織と人間」伊藤整
「転向論」吉本隆明
「宗教と文学」遠藤周作
「国民文学の問題点」竹内好
「告白体の大衆文学論」尾崎秀樹

【戦後文学の探求】
「実験小説論」野間宏
「変形譚」花田清輝
「短歌的抒情に抗して」小野十三郎
「西欧文学と日本文学」中村真一郎
「記録主義の精神」杉浦明平
「文学批評と価値判断」桑原武夫
「近代リアリズムの崩壊」中村光夫
「芸術にエロスは必要か」三島由紀夫
「言語と文体」江藤淳
「裁判(抄)」伊藤整
「チャタレイ裁判最終弁論」福田恆存
「女について」武田泰淳
「現代文学と性」大江健三郎
「おそれとはずかしさ(2)小島信夫