2006年7月18日 18:37:41

やばいと思いつつ、手にしてしまいました・・・

あら?そんな精神状態だったかなあ・・・・

雨を聞きながら、
一通の手紙を書き、
傘を持たずに切手を買い、

この雨以上の音を想像しながら、
帰宅後、森田童子を聞きながら。

『死の淵より』
高見 順

手にしちゃったんだよね・・・
何回目だろう・・・

高見順。
ご存知、巨人です。巨大なる文士です。
それはそれは多くの著作があります。
本書は、
著者が食道癌の手術前後に
病床で記した詩群です。

言葉を失います。

最初の一篇は有名な「死者の爪」です。

「つめたい煉瓦の上に
蔦がのびる
夜の底に
時間が重くつもり
死者の爪がのびる」

言葉を失います。
言葉がこれほどまでに生き続け
言葉がこれほどまでにエネルギを失わず、

正視できないほどの景色を創り上げ、
常人には耐えがたい色を練り上げ、
時間は止まり、
その止まった時間に全てが塗りこめられる。

ああ、芸術の本質そのものだ。
そう、時間が止まらなければ芸術ではない。

それにしても、
自分はどうして、左側の文士を好むのだろう・・・・
高見順もそうですね。
悪名高い築地署で拷問を受けています。
小林多喜二もそうです。
そして、埴谷雄高もまあ、その傾向。

溢れる涙に不純なものを感じながら
雨の午後を生きました。
溢れる涙に希望の熱を僅かに感じながら、

森田童子が
「例えば僕が死んだら
そっと忘れて欲しい」
と囁きます。

手に入れておくべき本です。
講談社文芸文庫。
今なら、購入できます。
購入できるときに手にするべきです。
なぜなら、
日本は、こういった文学に
時に非情な残酷性を見せるからです。