『ヴィヨンの妻・桜桃』太宰治
2008年6月11日 23:39:47
帰宅して、夕方から一冊の本を読んだ。
脚本のラストを迎えるといつも、無性に読みたくなる本。
何度読んだだろう。
完全主義・芸術至上主義の太宰の本領が存分に発揮された作品群。
『人間失格』『晩年』『斜陽』なんかが代表作で取り上げられるけれど、
それらは、太宰の止揚過程の作品だ。
太宰の本分は、こっち側の作品群。
芸術に憧れ、神に近づこうと、何段階もの弁証を繰り返し続けた太宰。
自分の脳内にある完全な作品を言葉にしようと、
言葉のあまりの不自由さに絶望をし、
けれども、その不自由の中で無限言語と格闘した太宰。
あと数行で脚本は書きあがるだろう。
けれども、それが、書けない。
夕方から、一冊のこの本を読んだ。
そして、万年筆にインクを入れた。