『腹腹時計と〈狼〉』鈴木邦男
2008年7月18日 23:34:20
あっ、と気付いたことがあって、本書を取り出した。
あっ、という思い付きが正しいかどうか、一気に読んだ。
そして、その『腹腹時計』を段ボール箱の中から探し出し、
読み比べていた。
一つの着想が別の何かを引き起こしていく歓喜を味わう。
思想が止揚していく証左を見た。
自分が小学生の頃の事件だ。
覚えている。テレビでニュースを見ていた記憶がある。
漫画にも取り上げられていた。『ドーベルマン刑事』だったか。
ドラマにも取り上げられていた気がする。
大きな事件だった。連続企業爆破事件。
あの頃、自分はどんな思いでそれをみていたのか。
その事件の背景など知りもしなかった。
犯人について知りもしなかった。
ただ、ニュースに踊っていた、気がする。
あれから30年以上が経った。
上京して、演劇をやってきた。
20年以上もやってきた。
あの事件の根っこの一つ、花岡事件。それを思い出したのだ。
そういえば、花岡事件を扱った演劇に携わったことがある。
なんども再演した舞台。その舞台で作曲をした。音響をした。
演者は、昭和精吾さん。寺山修司さんがひきいた「天井桟敷」の俳優。
演劇「花岡物語」。それを思い出した。
巨大なスクリーンに映し出される荒削りな版画と昭和さんの一人語り。
そうだ、作曲をしたんだ。
物語を読み、昭和さんの声を聞き、Amだけで曲を作った。
20曲以上だったか。全てイ短調で作曲をした。
当然、暗い。暗くて気分が悪くなるほどの旋律だった。
あっ、と気付いたのは、思想の寿命性と思想の移植性。
鈴木さんの書いた本書を読みながら、
考え続けていた。形になりそうだ。
その鈴木さんと8月、また話せる。
阿佐ヶ谷ロフトの壇上で、話をする。楽しい時間になるだろう。
編集者の椎野礼仁さんも話してくれる。
どんな話になるか。
演題は、「罪?罰?表現の自由?」としてはいるが、
あの鈴木さんのことだ。全方向的に楽しい論拠を展開してくれるだろう。