●2105●『天皇国日本論』『ロシア語のしくみ』『五輪書』『ロシア革命』『資本論 1』『レーニン』『ようこそ地球さん』

2009年2月20日 00:25:44



ひっくり返って本ばかり読んでいた。
手当たり次第に読んでいた。
何冊も並行して、一冊の途中で集中力が切れたら、別の本の続きを読み、
そんなことを繰り返し、本ばかり読んでいた。
社会との接点を持たずに、ひっくり返りでんぐり返り。

今日が何日なのかさえわからないまま、
昼なのか夜なのかも認識しないまま、
逃避だ、と思いつつも、本を読んでいた。

逃避?
本を読むことが?

違うな、と本を読みながら思う。
私という人格が本という物語の中に完全に取り込まれるほどの物語、
そんな本なんか、そうそうあるものじゃない。
そんな本に出会ったのは、数えるほどしかない。
それに、ここ数日読んでいた本に、小説はない。
思想書、歴史書、自伝、そんなのばっかりだ。

逃避じゃないな。と結論付けるも、どこかで、逃避? と感じる自分もいる。
それにしても健康第一。
市川未来が、「高木さんが健康第一って言うの珍しいね」とこないだ、言った。
そうかな? と思う。

でもまあ、やっぱり健康第一ですよ。

ここ数日、体の中でいろんなことが巻き起こり、
体の外でもいろんなことが巻き起こり、

(世の中いろんなことがあるな)と人事のように思い、
社会との接点が煩わしく、埴谷雄高を開いた。
どこまで社会とのつながりを断てるか、と思考実験してみる。

『天皇国日本論』四宮正貴(317)
『ロシア語のしくみ』黒田龍之助(143)
『五輪書』宮本武蔵(263)
『ロシア革命』著/ニコラ・ヴェルト_訳/遠藤ゆかり・石井規衛(170)
『資本論 1』著/マルクス、エンゲルス_訳/向坂逸郎(307)
『レーニン』著/レフ・トロツキー_訳/森田成也(533)
『ようこそ地球さん』星新一(372)

ひっくり返っていたからか、体中の関節という関節がぎしぎしと音をたてる。
背中のいろんなものが強張り、首が固まっている。
右側の肩甲骨の周りに強い違和感を感じる。
伸びをすると体のあちこちからバキバキと音がする。

時間がないな。

年齢じゃない。体力じゃない。集中力でもない。
ただ、ぼくの中に流れる絶対的な時間が足りていない。

時間がないな。

この体のあちこちに接続されているいろんなものを抜いてみる。
知らない間に接続されているいろんなユニット。
ぼくは、ぼく単体で作動するスタンドアロンなマシンだったはずだ。
それが、いつの間にか、コードだらけになっている。

USB以上に自由度の高い接続方法なのだろう。
ぼくに電源が入っていても、いつのまにか完全に接続されている。
足元はケーブルだらけだ。
体中から伸びているそれらのケーブルを抜いていく。
しかし、まあ、よくぞこれだけ接続されたものだ。
どれがどこに伸びているのか全然分からない。
手近な数本をまとめて引っこ抜く。
引っこ抜いて、ぼくの動作確認をする。うん、異常はないようだ。
もう少し抜いてみる。

ぼくは、ぼく単体で入出力を制御し、
ぼくは、ぼく単体で計算を行い、
ぼくは、ぼく単体で処理を行ってきた。

ぼくは、こんな風にネットワークに接続されることを望まなかった。
望まなかったのに、いつのまにかいろんなケーブルで繋がっている。

ぼくは、ぼく単体でしかなかった。
誰かがぼくの電源を入れ、そして、電源を落とすことは、ぼくに任された。
へその横あたりにあるマスタースイッチを長押しすれば、
ぼく単体の電源は落ちる様になっている。

マスタースイッチを押すには、いくつかのセキュリティをくぐらないといけないんだけど。

思考実験を繰り返す。
どこまで社会との接点を断てるか。
本を読むことで実験が加速するかどうかはわからないけれど、
少なくとも、読まないよりは、判断材料が多い。

時間が足らない。

ぼくに搭載されているバッテリももう数十年も前の古い型だ。
もちろん、外部からの電源供給は受けているけれど、搭載バッテリがダウンしたら、
いろんなシステムに不具合が出るのは必至。

体中からぎしぎしと音がする。
関節という関節がそれらしい音を出す。
思考実験の合間に、自己診断プログラムを作動させる。
体内の処理システム、通信システム、計算システム、保存システム、入出力システム、
電源システム、クーリングシステム。
一つずつ診断していく。

真夜中か。
いや、時間なんかどうでもいいといえばどうでもいい(と言い切りたい)

真夜中、診断プログラムのログを読む。
本を読むようにログを読む。