『赤目四十八瀧心中未遂』『人間そっくり』『おれに関する噂』『まだ科学で解けない13の謎』『おへそはなぜ一生消えないか』
2010年8月1日 21:57:36
こないだ読んだにも関わらず、またすぐに扉を開いた。
『赤目四十八瀧心中未遂』
そうだ、先日読み終えた瞬間にまたすぐに読みたいと思ったんだ。
そして、我慢できずに、読んだ。
眠ることを拒み、読んだ。また一気に最後まで、読んだ。読んで、また読みたいと思った。
そして明け方、『赤目四十八瀧心中未遂』のDVDをセットした。
静かに、観た。
『赤目四十八瀧心中未遂』を読んで、観て、
言葉を信じた。そして、言葉を嫌悪した。信じたからこそ、嫌悪した。憎悪した。
できるならば、言葉全てを失いたいと思った。
できるならば、言葉全てを爆破したいと思った。
信を書くことも語ることも言葉、嘘を書くことも語ることもまた言葉。
本当のことを書こうと何十年も右往左往してきた。
しかし、信を書けば書くほど、信の本当が伝わることはなかった。
書けど語れど信は分解。
本当のことを言えば、疎まれた。
本当のことを言えば、遠ざかった。
本当のことを言えば、関係が変化した。
本当のことを書けば、伝わらなかった。
本当のことを書けば、失われた。
『赤目四十八瀧心中未遂』車谷長吉
『人間そっくり』安部公房
『おれに関する噂』筒井康隆
『まだ科学で解けない13の謎』マイケル・ブルックス
『おへそはなぜ一生消えないか』武村政春
『赤目四十八瀧心中未遂』を読んだのは何回目だろう。
これまでに何度も読んでいる本の中でも上位にはいるだろう。
一番多いのは、『人間失格』だ。多分40回以上。
次が、『密会』『未確認尾行物体』『ときめきに死す』『晩年』『砂の女』あたりか。
この辺が、20回くらい。
その次にくるのが、
ドストエフスキーや阿佐田哲也、東西の詩集、山頭火、寺山修司、見沢知廉か。
10回前後といったところ。
『赤目四十八瀧心中未遂』もこのあたりだろう。
こうして思い返してみると、小説が多い。小説ばかりだ。
思想書、哲学書、数学書なんかは、ほとんど再読はしていない。
全集に収録されていて、仕方なく数回読んだりしたものはある。
マルクス、ヘーゲル、カント、デカルト、四書五経なんかはどうしてもかぶってくる。
ノルマ上仕方ないから何度も読んだ。
ただ、小説のように精神の渇望が本の扉を開かせたものは、ないだろう。
そうだ、昔は小説を書きたいと思っていた。
二十代、小説に取り組んだこともある。
脚本を書きながら並行して小説と言うものに心血を注いでいた。
書きなぐった何作もの小説はいまどこにあるのか。
今から20年も前だ。データなんかは残っていない。
あるとすれば、原稿用紙の束か。
随分といろんなものを書いてきた。
本当のことを書いたり、虚構の世界を書いたり、
信を書いたり、嘘を書いたり、
その頃から知っていたんだ。
信を書けば疎まれる、嘘を書けば喜ばれる。
なんて世界だ。くそったれ。
見沢さんは人を殺した。書いた。疎外された。そして、46歳で死んだ。
寺山さんは人を生かした。演じた。疎外した。そして、47歳で死んだ。
同じじゃないか。
もう少しだ。
誰かが喜ぶのなら、いくらでも嘘を書く。
世界がうまくいくなら、いくらでも嘘を吐く。
明日がないと言い張る唯一の嘘吐きになろう。