着物で対談
2011年5月4日 13:34:44
「ユカタラブin神楽坂フラスコ」が開催中。
『みんなゆかたになぁれ!』というキャッチが静かな神楽坂を席巻。
吉原・キモノスイッチが神楽坂でイベントを開催中。
オープニングから参加させていただいた。初日から着物を召した多くのお客様が来店。
そんなお客様の着物を見るだけでも楽しく、(なるほど、あんな帯の締め方が・・・)(あの足袋は・・・)
と、一人、獲物を狙う鷹のように目を光らせて「着物を見」てきた。
写真は、新作のエヴァンゲリヲン。
会場でも話題集中。
デザイナ芝崎るみさんの新作も並んでいる。
以前、書いたことを思い出した。
『芝崎さんの画は、予言だ』『予言する浴衣だ』『着るものに預言を与える浴衣だ』
新作の反物を手にする。そのことがよくわかる。
目の前でお客様がその中の一枚を体に当てられている。関西からお越しのようだ。
体に纏われたそれは、その女性を、確かに、女にしていた。そして、躊躇なく購入。
その勢いや感覚が手に取るようにわかる。
会場では、店長金子一昭さんがその人柄を豊かな鷹揚を自然としていた。
ここで月旦することはしないが、店長には『会えばわかる』喜びがある。そうなんだな。
『会えばわかる』としか表現できないんだ、これが。だから、『会いに』行く。
行動は、言葉で表現できないから、行動なんだ、と、お客様が会いにゆく。
時間を割き、雨をものともせず、そこに、『会いに』行く。
オープニング・イベントには、福島二本松『人気一酒造』の遊佐勇人社長が登場。
「長期熟成酒1998」「麦焼酎」「大吟醸」「ゆず酒」なんていうこだわりのお酒が並び、
「なんとなく飲んで500円」みたいなゆるい試飲会。
あの日の福島、そして、今の福島のお話を聞いた。きっと、あの一日は、止揚される。そう思った。
その遊佐勇人社長がお持ちになった『食べる酒粕』。
まだ作ったばかりで発売はこれからなんです、皆さまに食べていただき感想を聴きたい、と。
食べてみると、うまい! これは、うまい!
会場中から、「買いたい」と声が上がるも、「実は、これしかないんです・・・」と社長。
いずれ、ネットでも買えるようになるとのこと。ぼくのおすすめは、『辛口』
遊佐社長は、『文化を機械化することなどできなかったのです』と。
創業400年、江戸時代から続く老舗伊場仙の社長もご来店。
伊場仙は、江戸扇子・団扇・和雑貨を扱う老舗中の老舗。徳川家康について、三河から上がって来たそうだ。
吉田誠男社長が、どうやっても太刀打ちできない歴史という巨大な肯定に立たれていた。巨大だ。
14代目という歴史。『歌川派の版元として江戸に学ぶ反骨精神』
今社長は、復興支援に『江戸に立っ』ている。
会場では、店長がお客様に新作浴衣の説明をされたりしている。
手にしているのは、ぼくも一撃で気に入った『一角獣とマリア』。
夏は、これを着ようか、と計画中。似合うかどうか。白地か。
そして、このデザイン。処女マリアの顔に実は恐怖を覚える。
いや、恐怖と一言では言い切れないか。エロスとタナトス。
そんな店長の商品説明もユーストリームで中継。
ご覧になられた人なら、どんな店長かわかるだろう。ここに来ようかな、と思うだろう。
説明中の浴衣は、『江戸四十八』。
そのデザイン説明に四苦八苦。決して相撲の決まり手ではない。ついに店長が口を開く。「・・・体位です・・・」
とはいえ、このデザイン。洗練と歴史。雄大な人間の歴史の中で綿々と『在り』続けてきた営み。
『一角獣とマリア』をエロスとタナトスだとするなら、この『江戸四十八』は、一言、「地球」だ。
そんなこんなで、いろんなイベントがありながら、そのおまけに、芝崎さんと対談をした。
お客様を前にした公開対談だ。ユーストリームでも中継されながら、
『ぐっとくる着物』という論題。確かに、『ぐっときている』のですよ。ほんとに。着物には。
写真を撮ることができなかったが、この対談の前には、清水宏さんの即興パフォーマンス。
ほぼ同じ時代を体験してきた演劇人。その驚くべき熱に驚く。楽しい。単純に楽しい。
楽しいので写真を撮れなかった。彼から目が離せなかった。写真を撮るのは、無理だ。
対談には、着物を着て参加。芝崎さんに作っていただいたオーダー着物。『達磨』だ。
もう何度も着ているが、着るたびに体に吸い付いてくる。体にぴったりと納まってくる。
着れば着るほど楽になってくる。「夏の着物が欲しい」と芝崎さんに言うと、「これ」
と、反物を見せてくれた。それを見た瞬間、『戦慄』。その反物が着物になった姿を思い浮かべる。
思い浮かぶが、それをぼくが着ている姿が、まだ見えない。芝崎さんには見えているようだ。
一切お任せだ。そう、『戦慄』が走るところには、必ず『旋律』が在る。
夏のその着物には、ぼくのメロディがあるはずだ。
対談は、雑談的に始まりながら、「演劇と着物」「着る者と纏われる素材」など、
ぼくの仕事に関わり合うことを話させていただく。唐突に芝崎さんが、
「遊び人って何ですか?」と。遠山の金さんの話だ。
「高木さんは、遊び人ですよね」と。まあ、そうだ。遊び人、か。間違いではない。
神楽坂という街を着物で歩く。
リサイクルのきもの屋さんがある。
和雑貨の店がある。
近代的な建造物がある。
巨大な大学がある。
路地に営々と続く和菓子屋さんがある。
若者が肌を露出させて歩く向こうから紬の着物に帽子をかぶった男性がやってくる。
雪駄の音と女子高生の嬌声がミックスする。
そんな街を着物で歩いた。