写真家吉田豊一
2017年7月5日 23:53:19
陰影に潜む
いつも舞台を撮影していただいている。
写真家吉田豊一さん。ぼくと同い年だったはずだ、確か。街は違えど同じ時代を過ごしてきた吉田さんが、先日の作品「正義の人びと」を紹介してくれている。
ぼくは、この生涯でたくさんの写真を見てきた。人並みに、だが。
雑誌は写真にあふれ、街も写真だらけだ。新聞にも身近な生活の中にも。何万枚何十万枚も見てきたはずだ。もしかしたら、何千枚何百万枚かもしれない。想像しようにもその概算すらわからない。この部屋の中もなんだかんだと撮影されたものばかりだ。そうやって人並みにたくさんの写真を見てきた。
そんなたくさんの写真の中で、心を奪われた写真が4枚ある。50年の生涯で4枚。音楽や絵、映画や小説、短歌や建築、例えばそんな事ごとにたいしては、たくさんの心奪うものがあるのに、こと写真に関しては、4枚なのだ。ぼくは、写真に対して不感症なのだろうか。
4枚の中の1枚は、吉田さんの写真だ。どの写真かを指すことはしない。ぼくの生涯を曝け出されそうな恐れを感じるから。