脚本が書きあがった
2008年10月17日 21:26:17
言葉にできない、と
高い山の手前でその頂を見ていた数日間。
ラストシーンを書いた。
原稿用紙に27枚。
一般的なラストシーンの文量ではないだろう。
けれども、フラッシュする画を、
そこにある構築をこつこつと万年筆で削りだしていくと、
そうなった。
実際の舞台ではたかだか10分ほどのラストシーン。
それを書き終えた。
書き終えて、日付とサインをした。
それで、終わり。終わった。
明日の稽古で劇団員あべあゆみに手渡し、
数時間後には入力されて戻ってくるだろう。
校正をして、役者に、スタッフに、関係者に配布する。
校正といっても、もう大きく直すことはないだろう。
終わった。
書き終えた後の満足感なんかやっぱりない。
全然無い。これまでとおんなじ。
虚無虚脱、対自己疑問に吐息ため息。
一本の脚本を書いた。
今日は、友人の誕生日。
その友人がこのHPを見ているかどうかは知らない。
何年の付き合いかも定かではない。
12年ほど前には、毎日のように一緒に居た。
ホモか、と間違われるほど一緒に居た。
一緒に曲を作り、夜を徹して録音をし、
真夜中の下北沢を幽玄と夢幻に歩き回り、
録音のための一室を煙で充満させ、目を充血させて、
彼と一体どれほどの曲を書いたか。
どれほどの歌を作ってきたか。
いつも「やっほー」とやってきた。
いつも「じゃねー」と帰っていった。
今は、一年に一度会うかどうか。
会えば変わらないお互いを笑いあう。
過ぎていった10年を20年を笑い飛ばす。
彼は、今日37歳になった。
メールをした。
「やっほー」とメールをした。
「年末にね。じゃねー」と短い返信が来た。
200曲、300曲、1000曲。
彼との音楽。そして彼は今も音楽にいる。
脚本を書き終えた日、彼の誕生日だった。