『昨日』 著/アゴタ・クリストフ 訳/堀茂樹

2006年8月19日 19:40:59

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しかしまあ、本の価格って、
もう少し安くならないかなあ?

いや、もちろん、文学という価値を
金銭に置き換えることの愚かしさはわかってますよ。

そういう形而上的なことじゃなくて、

もう、現実問題!!!

きちんとした出版社には、
税制優遇を与えて、
経済特別産業に認定。
法人税免除、社会保障優遇、インフラの優先設備、
・・・・
そのかわり、
毎年厳しい審査が待っています。
どんな書籍を世に問うたか、
売れたとか売れないじゃなくて、
その出版社の理念がある出版形態であったか。

審査に受からなければ、免許を取り消されます。

なんて、・・・

そんな感じになれば、
文庫は一冊300円くらいになるんじゃないかなあ?
単行本も1000円くらいで。

『昨日』
著/アゴタ・クリストフ 訳/堀茂樹

「悪童日記」のアゴタです。

新作です!

「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」の三部作を完結させて、
久しぶりの新作!!!

帯には、

「異邦にありて
ひたすら私は書く
不可能な愛の物語を」

いい作品です。
もう一度、近い将来読み直してみましょう。

異邦にて空想の女性リーヌを愛す男。
真実は知っていながらあえて、空想する。
「孤独」「死」「戦争」「絶望」・・・
なんてイメージが付きまとい、

世界から見放されていくような恐怖を感じつつも、
読まずにいられない。

残酷です。
(残酷な描写という意味じゃないですよ、念のため)
残酷な美しさです。

戦争、亡命、孤児という
現代日本では体験しづらい背景にもかかわらず、
この身に体感できるのはなぜでしょう。

残酷な美しい、愛。
そして、

自らをどこまでも突き放す虚無と客体。

うん、いい作品です。
こんな文学がこの日本に生まれないものか。

言葉が慌てふためいている
2006年日本。
新しい居場所を求めて、
大移動を始めている言葉達。
本当のことを知ろうと、言葉自らが言葉を精査し始めている今、

うん、

そう。

絶望は、死に至る病。