稽古からの帰り道、ただただ帰り道であることに気づき、帰り道に価値を与えようと焦るが今日のこの帰り道はもう帰ってこないんだな、と怖くなる、
2009年3月6日 00:06:27
稽古場を出て、みんなの後姿を見送り、そして、帰れなくなった、
たまにあるんだ、こんなことは、と、煙草を吸いきるまで、留まってみる、
あれ?
いつもと違うな、
もう一本煙草に火をつける、
今月末の劇団再生の公演、
脚本を削りだし、そして稽古を重ねている、
告白に告白を重ねた脚本、告白しすぎて、真実味が失われているのではないか、と
書きながら思ったりもした、けれども、そんなことに知らん顔して、告白し続けた、
これまでの悪事の数々を一つずつ数え上げながら、
傷つけ続けた日々を無理やり記憶の表層に上げてきた、
ぼくは、ぼくを取り巻く人々を嫌悪し続けてきたんだ、と声に出してみる、
ぼくの言葉は嘘だ、ぼくは、言葉を一切信じていない、
だから、ぼくは、本当のことを言ったことがなかった、言葉を嫌悪し、そして、他者を嫌悪した、
それは、とりもなおさず自身に返される観念だけど、
それに気付いたのも、たったこないだのことだ、
言ってはいけないことをあえて言って他者の破壊に快楽を見出す、
他者を破壊し、そして同時にその破壊にひざまずく、
帰れなくなった、
稽古場でたった今まで行われていた劇団員の乱舞、
言葉を尽くしながら、けれども、
今、
これ以上書いてはいけない、と人間高木尋士の制御装置が働く、
社会とのリンクがこの期に及んでもまだ機能している、バカらしい、
こないだから、少しずつケーブルを抜いている、
完全なホットプラグ、
ぼくに電源が入っていても、一気に引き抜くことができるケーブルというケーブル、
劇団再生が創っているものは、演劇ではない、
それは、断言できる、
芸術、作品、違う違う、バカにするな、とバイクにキーを差し込んでみる、
帰れるかな、
稽古場の前、暗い帰り道に消えていった彼ら、
ぼくは、劇団員を喰らい尽くす、
口の周りを血だらけにして、そして、彼らにひざまずく、
いや、逆か・・・
劇団員の血だらけの口の前に横たわるのが、ぼくか、
なんにせよ、赦しを、
帰れなきゃ帰れないまでだ、
と腹をくくる、
外灯の少ない、稽古場前の道、
帰るには、少し登りの坂道、
坂道の上に信号が見える、
赤、
帰れなきゃ帰れないまでのこと、
どうでもいいか、
さあ、ぼくはどこに行こう、
行きたい場所なんかいつだってたった一つだ、
わかっていても、口に出してみる、
どこに行こう、
分かっていても、口にしなければならないのはなぜか、考えてみた、
考えるまでもなく、ぼくがまだ人間だからなんだな、と答えが出た、
人間という弱さと害悪を含んだ物質だからだ、
人間を越えたいと思い続けてきた、
言葉を越えたいと思い続けてきた、
ここに書き付けることもまた言葉であるということこそ越えなければならないと思い続けている、
喧嘩をしたい、と思ってるんだ、とはたと気付いた、
誰かいないかな、きょろきょろ辺りを見回す、
見ず知らずの他人だろうが、知り合いだろうが、ぼくだろうが、
誰か、喧嘩できる人いないかな、と辺りを見回す、
破壊したい、破壊したい、
何もかも破壊したい、
稽古場で言葉を尽くす日々、
ぼくの言葉が伝われば、それは、もちろんわかる、
伝わっていないことも、もちろんわかる、
ぼくは、言葉を選択したんだ、
言葉を尽くす以外の方法は劇団員に対して礼を欠く、
ぼくは、どこに行こうとしてるんだろう、
分かってるよ、そんなことは、
二本目の煙草も吸い終わり、
さて、どうするか、
喧嘩を買ってくれる誰かはいない、
達磨法師のように、面壁九年、両手両足を切り落としてみるか、
それが今の唯一の解決かもしれない、
目の前で行われる劇団員の乱舞を観ながら、
言葉が独居独立傲岸不遜の宣言をし始めているのを見た、
言葉と肉体の関係に独立の一本の線がひかれた、
さて、どうするか、
帰りたいな、
どこかに帰りたい、
帰りたいな、
あの場所だ、
もういいかな、
帰りたい、
ままよ、キック一発エンジンをたたき起こす、
3本目の煙草をくわえ、メットをかぶる、
アクセルを開ける、
ブレーキをかけずにどこまで走れるか、
あの場所まで走れるか、
稽古場を出て、みんなを見送り、帰れなくなったままの夜、
さっきの稽古場で声をあげた言葉の独立宣言が耳に蘇る、
帰れなくなった今日は、
考える今日かな、
帰りたいな、
帰りたい、