たくさんの音楽を持っていき、400kmを疾走。俺に愛される資格はあるか、俺はまだまだ恨まれているか、との設問に答えようとアクセルをふかす。第一の設問にNoと答え、第二の設問にYesと答えざるを得なかった。そりゃそうだ。

2009年4月14日 19:51:40

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その日の前日、東名高速で不意に流れた「シェリー」
涙が止まらなくなった。
なんで涙が止まらなくなったのかを考えようとしたけれども、
原風景に近づき、原罪の巨大な影に怯え、できなかった。

久しぶりに一人で運転だった。
楽しみだった。浮かれて、たくさんの音楽をCDに焼いて持っていった。
ランダムに選曲し、80曲。
レンタカーを借り出して、CDを挿入。
一曲目は、石川さゆりの「天城越え」だった。
こりゃいかん! ととりあえず、飛ばした。
スタートしたばかりの上板橋駅前で、それはない!

スキップしてかかったのは、RCの「いいことばかりはありゃしない」

よしよし、中台から首都高、東名へ。
箱根で、日本庭園をいくつか見た。
竹と苔が見たかったんだ。

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東名厚木が近づいたとき、「シェリー」が車内に流れた。
涙が止まらなくなった。
ナビが、東名から別の有料道路に乗り換えろと教えてくれている。
緑色の案内看板が見えている。
「シェリー」はこのまま、東名を突っ走れと言っている様だ。
涙が止まらず、速度を、けれども落とした。

設問を二つ用意し、箱根に向かった。

翌日、箱根美術館を訪れた。
行きたかった美術館。
苔と石と竹の庭がある。
その庭は、土日しか公開していない。チャンスだ。今日は日曜日。

まだ苔むすとはいえない苔の庭を歩く。
巨石に根付いた松を見る。その根を見る。
石についた苔に内なる官能を呼び覚まされ、
自宅の盆栽の20年後に夢を馳せる。
明日なんかない、明日なんかない、と呟きつつも、20年後の石付きの黒松を思う。

庭を歩きながら、昨晩用意された二つの設問を考え続ける。
上京してからの25年近くを歩く。
18年を過ごしたあの長州の海を歩く。
こうして、苔と石の庭に感応する自分を父親に重ね合わせる。
DNAか? 父に似てきたな。

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箱根からの帰り道、またも東名。
事故渋滞につぐ、事故渋滞。その先は自然渋滞。
まあ、仕方ない、と思うもイラつく。
持参した80曲もあらかた聴いた車内。

渋滞と渋滞の合間でアクセルをふむ。
カーステレオのボリュームを最大にし、窓を開け、アクセルをふむ。
楽しくて仕方ない。
歌う、歌う。

歌いながら、アクセルを踏み、自分撮り。

流れる二十数年と疾走する四十数年にあの二つの設問が、
さあ、どうだ! と迫る。
答えなんか分かってるんだ。
分かってるんだ。