こうして偉大な一日を手に入れ、夜という夜に言葉を交わし、偉大な一日を一つ重ね、情熱と情熱、魂と魂、命と命を夜という夜に交わし、疲労の果てに電車をあちこち乗り過ごす
2009年9月11日 01:17:29
タイトルどおりの一日を過ごし帰宅すると、
コトバは暢気に止まり木で寝ていた。
話したいことがたくさんあったのに、まあいいか、
話し相手はもう一人居る。ぼくだ。さあ、真夜中じゃないか。
ぼくと話をしよう。
こんな一日を、朝起きた時には想定しなかった。
いつもより少し早く起き出し、
大浦信行監督の映画『天皇ごっこ〜たった一人の革命〜』の撮影に立ち会った。
撮影現場であるスタジオは、驚きの場所で、
そこには、戦後日本の歴史が染み込み、
戦い続け、今も戦い続けている芸術家の集まり、
人を喰らおうとする藝術という化け物が跋扈するスタジオ。
監督もカメラマンも制作もスタッフも俳優もぼくも、
その藝術の化け物に魅入られ、
逃れられず、
いつか、ここを仕事場にしようと決心した。
たくさんの言葉を交わした。
命のやり取りをした。
魂のつかみ合いをした。
こんな一日になるとは、朝起きた時には思ってもいなかった。
果てしない荒野を見、
果てしない海原を見、
夜という夜に言葉をかわすこれこそが、と口をつく。
ぼくたちにわからないことがあるだろうか。
ぼくたちにわかることがあるだろうか。
と、以前立てた問いをあらためて眼前に問う。
遠ざかる藝術は同時に近付く藝術であることの矛盾なき構造。
遠ざかるぼくたちは同時に近付くぼくたちであることの矛盾なき構造。
夜という夜。
偉大な真夜中。
読書に夢中になり電車を乗り過ごし、
乗り換えてもまた乗り過ごし、
終電はなくなり、
たかだか10km。歩いて帰るか、と思うも、体が重く、
タクシーに。
タクシーの中でも交わした言葉は蘇り、
言葉という言葉が驚くほど生き生きと跳ね回り、
ぼくはここだ、と言葉が踊りたち、
よしきた、受けて立とう、と真夜中に一人を知る。
お前らの相手は、このぼくだ。
覚悟はついている。
と、言葉との格闘を始めたら、コトバが起き出し、
ほー、と鳴いた。