2010年4月8日 00:02:17

もうずっと読んでいるけれど、読み終わらない本。
読んでも読んでも読み終わることがない。
読むのが楽しくて、読むのが嬉しくて、読むのが苦しくて、読むのが至上の本。
1ページ読む、そしてページをめくる。

また1ページ読む、また次のページをめくる。

もうずっと読んでいるけど読み終わらない本。
何ページあるのか見当もつかない。
終わりがあるのか皆目分からない。

どうやらその本、俺に読み終えられないように自身、書き継いでいるようだ。
終わりがないのだから、今どこまで読んだのか、それさえ不明だ。
読むの楽しく、読むのが嬉しく、読むのがけれども苦しくて、ページをめくる。

俺だけが読むことができる本。
俺だけが読むことを許されている本。
俺は読み続ける。毎日毎日読み続ける。けれども読み終わらない。
成長する本だ。何を養分に成長し、何を道具に書き継いでいるのか。
俺だけが読むことができる本。

俺以外にもその本を読もうとする人がいるだろう。
けれども、
彼らに、その本の活字を追うことはできても、「読む」ことはできない。
できるはずがない。その本は、俺の本だ。
読むか、書くか、死ぬか、と三択し続け、そしてまた、

その本を読むか、その本に書くか、その本と死ぬか、と。

もうずっと読んでいるけれども、読み終わらない俺の本。
終わりがあるのか、ないのか。
真夜中、その本をこの手にのせ、表紙を撫でる。
ひんやりとした感触だ。手触りのいい本だ。景色のいい本だ。そっと表紙をめくる。
自分の目が輝くのがわかる。誰にも見せたことのない顔をしているのがわかる。
ページをめくる、楽しくて、嬉しくて、ページをめくる。
俺の本を読む。歓喜し、激しく荒々しくページをめくる。

どこを読んでも俺の本だ。読み終わらない本。読み終えない本。
真夜中、そっとそれを手に乗せ、

その本を読むか、その本に書くか、その本と死ぬか、と。

俺だけが読むことを許されている本。
パソコンから、「飢餓海峡」が流れてきた。
(たとえ地獄の果てまでも・・・)石川さゆりが情念する。

地獄の果てか。いいだろう。行こうじゃないか。なあ、本。
連れてってやる。
無人島だろうが、形而上だろうが、暗黒暗闇真っ暗闇だろうが、
読み終わらないその本があれば、

生きるに値する。

真夜中、そっとその本に手を触れる。
寝汗をかいて起きだし、本があるかどうか手を伸ばす。
真夜中そっと、その本に手を触れる。