太宰を呟きながら
2010年7月25日 20:39:57
『死のうと思っていた。
今年の正月、よそから着物一反もらった。お年玉としてである。
着物の布地は麻であった。鼠色の細かい縞目が織り込まれていた。
これは夏に着る着物であろう。
夏まで生きていようと思った。』(太宰治「葉」)
寂しさとともに思い出した。
一字一句間違えることなく思い出した。口をついた。
何度も何度も読んだ太宰の「晩年」その中の「葉」。書き出しだ。
今、目の前にある反物を見ながら、何度も何度も口をつく。
今日、よそから着物一反もらった。遺品としてである。
着物の生地はウールであった。亀甲繋ぎの細かい柄が織り込まれていた。
これは冬に着る着物であろう・・・