コトバノトウ
2011年1月4日 22:50:26
あなたは、言葉の塔に呪われている。
と、夢の中で一人の女に言われた。その女はマントを着ていた。
何本かの木がたっている平地。どこか大きな庭とも思えたがはっきりしない。
夢の中で、音羽の鳩山邸はこんな感じかな、と思ったことは覚えている。
足元は土。乾いた土だ。風が吹き土埃が舞う。視線の向こうに人影を見た。
ぼくは、その場所で誰かを待っていた。誰を待っていたかはわからない。
その人影を認めたとき、違う人だ、と思った。
その女は、マントを着ていた。光の加減か、灰色に光って見えるマントは風に吹かれていた。
女が近づいてくる。
女とわかったのは、こちらにかなり近づいてきてからだ。
それまでは、男だか女だかわからなかった。
まっすぐに女が近づいてきた。
そして、言った。
あなたは、言葉の塔に呪われている。
聞き返した。「トウ?」
コトバノトウ・・・
「言葉の」は、瞬時に認識した。「塔」を見失った。
「トウ?」
女は、ちら、と右斜め上方に目をやった。
その目線で、「塔」だとわかった。
女と少し話した気がするが内容は覚えてはいない。そして随分時間がたった気がした頃、
「時間です」と女が言った。
そんな夢を見た。
起きたら退屈な実存があった。退屈な作業があった。
また、世界を翻訳しなければならない。見えるものをそのまま描くという虚無と退屈。
虚無だが書いてきた。退屈だが書いてきた。伝える情熱があった。パッションがあった。
だから翻訳者にもなった。同時通訳者にもなっている。
夢の中で出会った女はどこに行ったのだろう。
そこで、ぼくは誰を待っていたのだろう。
そんなことを思いながら、目を覚ました。意識的に目を覚ました。
「言葉の塔」か。なるほど、神への挑戦だな。神への宣戦布告か。或いは、死刑宣告か。
なんにせよ、起きたら、退屈な実存があった。