『熱き血の子』山平重樹
2015年7月22日 23:03:54
8月『天皇ごっこ〜母と息子の囚人狂時代〜』にコメントをいただきました
『熱き血の子』山平重樹
三島文学が母倭文重(しづへ)さんなくして誕生しなかったように、
見沢文学も母京子さんの加護なくして産まれなかった。
見沢知廉は文学に永遠の志を抱きながらも、
最後まで革命家として死ぬことを夢見た—
紛れもなく三島由紀夫と縁続きの過激浪曼主義(ラジカルロマンチシズム)という宿痾を背負った作家であった。
文学者であるにはあまりに血が熱すぎ、革命家であるにはあまりに文学の女神に魅いられすぎていた。
わが死せむ美しき日のために連嶺の夢想よ!
汝が白雪を消さずあれ—
と詠った伊東静雄の譜をつぐ日本浪曼派の子でもあった見沢は、
あの日、赫奕たる残照のなかに舞い、「汝が白雪」を証明してみせたのだった。
見沢知廉はなぜ自栽したのか?
この野暮な問いに、いまごろ見沢は、いつものように母にたしなめられながらも、
「夕陽があまりにも美しかったからさ。死ぬには最適の日だった」と、天井で高笑いしていることだろう。
あの人懐っこい笑顔と、独特の、これ以上面白いことがあるかという腹の底からの哄笑で。