高木ごっこ・・・389-77『映画を見たり、芝居を見たり、渋谷』
2008年1月19日 23:39:18
プラトンの『ポリテイア』第7巻のはじめに、
こんな比喩がある。
洞窟のなかに鎖でつながれた人々のことが書かれている。
彼らは、彼らの前にある岩壁のほうを向いており、
彼らの背後からは明かりが差し込んでいる。
だが、
彼らにはこの明かりを見ることができない。
そこで、彼らはただ前の壁に映るもろもろの影だけを相手とし、
それらのあいだの関係を解明しようとして骨折っている。
こうした状態は、
彼らのひとりが自分の鎖を断ち切ることに成功するまで続く。
彼は鎖を断ち切り、振り返ってそこに明かり―太陽―を見る。
まばゆさに目がくらんで彼はそこらを手探りし、
そして彼が何を見たかをどもりつつ物語る。
他の連中は、彼が間違っているのだという。
しかし、彼のほうはしだいにこの明かりを見つめることを覚え、
かくてここに使命が生まれる。
洞窟の中へ戻って、
他の連中の目を明かりのほうへ向けてやること、
それが彼の使命である。
プラトンを持ち出すまでもない。
芸術の領域で「個性」を持つのは
その個性ではなく、
その仕事に仕える人のみだ。
と、マックス・ウェーバーを持ち出すまでもなく、
芸術に必要なのは、命だ。
あなたの、命だ。
今日、映画を見た。
今日、芝居を見た。