稽古場から自宅への2分間。途中、国道254号線を渡る。メメント モリ、と呟きながら

2009年2月22日 01:17:26

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帰宅して、爪を切った。
一昨日から、切ろう切ろう、と思っていた。
爪を切ったら、真夜中が来た。

稽古場を出たら、いつも、
驚くほど集中していることに気が付く。
稽古場ではそんなことあまり思わないのだけど、

「お疲れ様」と、バイクに乗ってエンジンをかけると、
これこそが集中力だ、という感覚を知る。
それは、いつも決まって稽古場を出てからだ。

奥歯をかみ締めている。
目が据わる。
そして、フラッシュするイメージがひっきりなし。
それを制御できずに顔面が痙攣する。

そんな時、誰かに話したい、と思う。
この画を伝えたい、と思う。
思うけれども、個人の画を一方的に「聞かされる」身にもなってみる。
そりゃまあ、迷惑だ。
自分にしてもそうかもしれない。
(てめぇーのイメージなんか、知らねぇーよ)と、心で思うかもしれない。

1分前に別れた劇団員は、駅近くの居酒屋で腹ごしらえしてるだろう。
そこに乗り込んでみるか。
そんなことを思ったりもする。

高い確率で信号待ちをすることになる国道254号線。
信号が青に変わり、アクセルをあける。
メメント モリ、といつの頃からか呟くようになった。

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切った爪を灰皿に捨て、
煙草の火を押し付けてみる。
ろくでもない匂いが充満する。それもまた真夜中。

稽古場では夜毎、乱痴気騒ぎに似た精神の高揚が繰り広げられる。
ぼくが、抗議の高さを知ったのは、劇団再生で、だ。
確かにそうだ。

これまでの演劇生活の中で、
言葉にならず、あがき続けてきた想念の数々。
そんなものが一つずつ言葉になったのは、
劇団再生の休まず積み重なっていく稽古場で、だ。
そんな言葉が、たくさんある。
それは、ぼくだけが知っている積年の恥だ。

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なんのことはない。
爪を燃やせば、ろくでもない匂いがたつという
知っていたことを確認しただけだった。
けれども、確かに爪は短くなった。

メメント モリ、と呟きながら国道254号線を渡る。

帰宅して、集中し続けている自分を抑えるのをやめた。
脚本を開く。
何かを書き込んだりするわけではないけれど、脚本を開く。
開き、読む。
自分が書いたものだけど、そんなことには知らん顔。
ひたすらに読む。
俳優以上にこの本を読まなきゃどうにもならない。

この脚本に埋め込んだいくつかの暗号を自身あらためて解いてみる。
文体を崩してまで埋め込んだ暗号。
目に見えるギミックと隠しに隠したトリック。

そんな事ごとをあらためて読む。
まずは誰よりもこの本を読もうと思った。
爪の燃える匂いは、なかなか消えない。
寒いけれど仕方ない。換気だ。窓を開けよう。

メメント モリ、と呟いて、脚本を開くと冷気。