コトバという名のふくろうと高木という名のポンコツ
2009年3月26日 23:06:11
あと数十時間で幕が開く、そんな気がする。
明日なんかない、明日なんかないんだ、と呪文のように呟き続け、
社会との関係を維持するためだけの約束の日がそこだ。
明日なんかない、明日なんかない、と確信しているにも関わらず、
その約束の日に向かう。
明日なんかないんだから、今、この稽古をどうにかしないといけないんだ。
明日なんかないんだ。今日のこの稽古が、
常に最後の稽古なんだ。
稽古が終わり、プリントが配られた。
約束の日、阿佐ヶ谷ロフト、会場入りしてからの予定表だ。
そのプリントの最後に「元気よくあいさつしよう!」と書いてあった。
市川未来(ころすけ)が書き込んだ一文。
そういえば、ここ最近のぼくのあいさつはなってなかった。
ころすけに「こらっ!」って言われた気がした。
今日が最後の稽古だ。
いつもそう思う。
いつもそう思うけれども、稽古の最後に「明日」の予定や、
「明日」のことを話す。
それは、ただ、維持するためだけだ。
今日のこれが最後の稽古だ。
最後の稽古に相応しい一曲はなんだろう。
稽古を終えて帰宅する。
ずるずるとポンコツの体をひきずって、
「さて、やるか!」と声に出す。
(座っちゃだめだ!)とポンコツにゲンコツを食らわす。
やることをやってから座ろう。
やること、やること、と立ったままうろうろ。
洗濯! メールチェック! 会場入りの準備! 何か食べる!
順番に片付けていく。
色眼鏡を掛けたまま、赤いマフラーを巻いたまま、
洗濯機を回す。
立ったままパソコンを立ち上げる。
今日稽古場で確認した会場に持ち込むものをまとめる。
田中惠子にもらった「バランスなんとか」を食べた。
その間に携帯にいくつもいくつもメールがはいる。
ぼくもメールを送る。
明日なんかない、明日なんかないんだ、と呟き、
そういえば、今日も国道254号線を渡るとき、「メメント モリ」と声に出していたことを思い出した。
毎日毎日、常に今日が最後の稽古。
今日の通し稽古。ぼくが見たのはなんだったか。
劇団員の一秒を観る。劇団員の一ヶ月余りを観る。
劇団員とのそもそもを見る。
劇団員との長い長い出会いと別れをみる。
やることをやって着替えた。
着替えて、立てひざをついて、「ポンコツめ!」と口にしたら、
コトバが飛んできた。
立てひざの上にやってきて、「やあ!」と言った。
「やあじゃねえ! お疲れ様、くらい言ってみろ!」
「疲れてもいない奴にお疲れ様なんて言えるか!」と生意気口。
なるほど、そういえばそうだな。
疲れてもいない奴にお疲れ様はないもんだ。
「そりゃそうだ。コトバの言うとおりだ!」と言うと、
「疲れたふりをするんじゃない! まずは餌をくれ!」
いくつものメールを返し、
いくつものメールを読む。
「コトバ君、トークライブの資料をまとめなきゃ」
「じゃあ、まとめりゃいいじゃん」
うーん、そりゃそうだ。
まとめなきゃいけないのなら、まとめればすむ話か。
コトバの言うことは一々もっとも。
とはいえ、
このポンコツの体。
横になりたがっている。
洗濯の終わった合図の音がした。