午前3時、リブート

2010年3月3日 21:09:28

写真

外の景色はまったく見えない。
窓はない、完全防音、煌々と灯りがともり、目の前には時計。
24時間仕事をするために造られた建物、24時間創造するために造られた部屋。
そんな場所に時計はあっても時間はない。

外の景色がまったく見えない。近くを通る幹線道路の音も聞こえない。

目の前に時計はあっても時間のない場所。3時か。
真夜中にもほどがある。サーバがリブートするジャストタイムまでカウントダウンをしてみる。
あと1分。

あと30秒。

10、9、8、・・・

サーバは間違いなく起き直した。
数行追加された命令も今後静かに実行され続けるだろう。
3時か。どうやって帰宅するか。
バイクは自宅に置いてきた。始発まであと2時間。

お疲れ〜、と友達が入ってきた。
元気がいい。真夜中の作業がすっかり生活に入り込んでいる元気だ。
「たまには太陽に当たったほうがいいよ」と会話の糸口を提供してみた。
「太陽にあたったらカルシウムが増えるからね」と彼は繋げて切った。

3時か。

赤い髪の毛の女の子がコーヒーを淹れ、サンドウィッチを用意してくれる。
「ここで煙草が吸えればいいね」と女の子に言うと、「禁煙です」と言った。
分かってる。もう十数年前から禁煙だ。禁煙だから言ってみたまでだ。

「あの音なんとかならないの?」と友達が不意に言った。サーバのクーリングファンの音だ。
あの音がうるさい、というよりも、不快な音らしい。
「金をかけて設備投資すればなんとかなると思うけど」数値的な根拠無くそう言った。

「どうする? タクシー呼ぼうか?」

3時か。始発まで2時間。

「なんかあるの? 仕事?」と友達に聞いてみる。
今日はもう終いらしい。

「始発まで待つよ」と答える。「ちょっと横になってるよ」と。
「じゃあ、何か読むもの持ってくるよ」
彼が持ってきたのは、週刊新潮と西村京太郎。

「ありがと」と受け取り、鞄から「北一輝」を取り出す。
あと2時間か、眠れるなら眠ろう。

5ページくらい読んだ。
眠ったようだ。
赤い髪の女の子が起こしにきた。顔を洗って聞く。「あいつは?」

「寝てますよ」

さあ、帰るか、と伸びをして朝の山手通りをのこのこ歩いた。
歩きながら、何度も『俺の声』を歌った。