キチガイ、と俺の言葉と夜、いいんだな、お前を道連れだ、聞こえるか
2010年3月8日 20:42:42
『マトリックス』が目の前のモニタに流れている。
音がない。
時々、コトバが餌をねだって、赤ちゃん怪獣のような鳴き声をあげる。
音楽もない。
珍しい。この部屋に音楽がない。静かだ。
青の「MATRIX」がただ静かに流れている。
原稿用紙を広げる。
万年筆のインクを確認する。
ここに座り、
キチガイ、
そうだ、俺もお前もキチガイだ。
そんなにそこに行きたいのか。そんなにそれが欲しいのか。
俺だけの言葉、お前を連れて行く。
俺だけの言葉、お前を抱いて行く。
いいんだな。
そこは空の真ん中だ。お前を道連れにそこに堕ちて行く。
お前を連れてそこに眠る。
そこは、真っ暗闇だ。
そこに堕ちる道は、破滅の道だ。恐怖の道だ。裏切りの道だ。
罵りと嘲り、そして忘却の道だ。わかってるな。
俺だけの言葉、どうしてそんなに悲しい目をするんだ。
俺だけの言葉、どうしてそんなに寂しい笑みを笑むんだ。
俺だけの言葉、どうして肯くんだ。
俺だけの言葉、お前を連れて行く。
泣くな、なんて顔をしてるんだ。
あのいつもの顔はどうした、言葉。
ほら、いつものあの顔だ。
俺だけの言葉、お前は、俺を知っている。
俺だけの言葉、お前は、俺を見ている。理解者か。
原稿用紙にあの物語の続きを書く。
一文字ずつ、書いていく。あの記憶、子供の頃に見た記憶。
何十年もかけて言葉を手に入れた。
そして、俺だけの言葉を手に入れた。
行くぞ。
一緒に見たあの空だ。今から連れてってやる。
万年筆で一文字ずつ原稿用紙に書いていく。
さあ、行くぞ。
手に力を入れる。力一杯の俺の力で言葉、お前を連れてってやる。
道連れだ。
キチガイめ。