『苦き錠剤』十首

2010年6月24日 14:49:24

それにしても詠み続けていた。
次から次に吐き出される三十一文字。
頭がどうにかなったのではないかと思うほど次から次に。
吐き出された何十何百という歌がどれほどのものか、
客観的な審美眼はもたない。
いい歌なのか、どうしょうもないほどダメな歌か。
わからないけれども、
何故か、

次から次に口をつく。

夢に逢いし我の言葉を寝言にて 口にす夜を笑う看護婦

カラフルな錠剤並べ数え歌 歌い終えずに床にぶちまけ

手に入れた俺だけの言葉その香り 辿りし歩く点滴引き摺り

香を運ぶストール握り祈る夜 言葉の淵から共に堕ちよと

夢の中彷徨ひ歩きし荒野にて 宛て先のない告白と手紙

窓を開け死せる日々を追い出して 万年筆を荒野に突き刺す

銃握る我の細胞蝕むは テロリストか或いは言葉か

なけなしの金にて購いアイスクリーム 舌に甘きて人知れず笑む

六月の外ばかり見し福耳の 白衣の権威にすがるしかなし

舌苦き錠剤飲まんと水欲し 汚れしコップ投げ捨てる午後