明日という語
2010年7月30日 16:21:32
明日、時計に電池を入れる
明日、何か一つ良いことをする
明日、コトバと仲良しをする
明日、笑ったふりをする
明日、石川啄木を読む
明日、みんなに手紙を書く
明日、生きている
明日、少し泣いてみる
明日、携帯電話を忘れて行く
明日、思いっきり両手を広げてみる
明日、昨日を忘れる
明日、何か本を一冊手放す
明日、過ちについて考える
明日、一切の欠片をばらまく
明日、海を見に行く
明日、俺たちに明日はないと三回言う
明日、南に向かって体を投げ出す
明日、一番好きな映画を決める
明日、言葉の縁に立つ
明日、寂しさに向けて唾を吐く
明日、何か食べる
明日、オジギソウに触ってみる
明日、半生を一言で言ってみる
明日、明日を検証する
と並べたところでそれを何と言うのか
予定か予言か願望希望か
くだらねぇ
煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし
寺山さんは「明日」に何を見ていたのか
寺山さんの言葉に触れていた
何時間も何時間もじっとそこにいた
過去形でしか書くことのできぬ真実ならばぼくは一人ぼっちの嘘吐きになりたい