中川右介『昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』
2010年10月2日 22:39:43
中川右介氏の新刊。頂き、すぐに読んだ。
おもしろかった。久しぶりに時間を忘れて一気に読んだ。
一度も本書から目を離さずに読み切った。こんな本は珍しい。
タイトルからわかるとおり、『あの日』だ。まさに『あの日』
それにしても、著者中川氏の筆致には毎度のことながら感嘆する。
マクロ的視点があるから、これほどまで執拗に視点変化が行えるのだ。
巨視的な場所に立てないものがこの方法を採れば、
ただ散漫で、ただバラバラで、ただ空漠な紙面に言葉が躍るだけになるだろう。
著者中川氏の偏執的ともいえる無限の視点。
そうだ。まさに偏執。
それは、これまでの著書にもその傾向があらわれているが、その集大成ともいえる視点が本書だ。
カラヤン、フルトヴェングラー、中森明菜、松田聖子、ショスタコーヴィッチ、歌舞伎・・・・
多くの著作は、この巨視的偏執的無定点を目指していたのか。
こんな論点の構築は、通常は無理だ。それをなんなく一視点に書き落とせるのが中川氏の筆だ。
一気に読み切った。
そう。これを読んで、何かを思い、何かを考えるのは、読者の仕事だ。
『あの日』がまざまざと蘇る。
ぼくは、この日を覚えてはいない。3歳だ。なんの記憶もない。
『あの日』のことを知ったのは、もっと年を重ねてからだ。
書物で知った。
『あの日』を知る人の言葉で知った。
ぼくには、『あの日』に対するノスタルジは、ない。
ないが、
ある。
本書を読んで、そのノスタルジが湧き上がり、『あの日』の記憶が蘇る。
『あの日』を知らないのにだ。
本書の構築は、映像では決してできない。
言葉だからこそ書き組むことができた論だ。
一気に読み切った。
中川右介氏とゆっくり話をしたいと、思った。