ぼくたちの人生は何行だろう

2011年9月16日 22:01:47


あべあゆみ

六行に閉じこめられし我が生に叫び語れる舞台はありや


磯崎いなほ

雨に問う言葉全てが降るならば最後の単語それは何かと


井上雄策

演劇の千年王国言葉もて夢見し我はめくらのスズメ

マルクスは窓に並びて威儀正す歴史の審判怖れることなく


加藤翠

意味も無く煙草に火をつけ消えるまで立ち上る煙を見ている、一人


紅葉

わけもなく空を飛びたき少年は八階の空の低きを悲しむ


齊藤未央

この道に立ちてのぞむは邪宗門くぐれば地獄ひくも地獄か


清水周介

何か一つ我が力もて何か一つただ何か一つ愛してみたし


千賀ゆう子

夜明けまで生きて暮せる場所が欲しいここではないここではないと


田中惠子

逃げ出した登場人物どこにいる吾はゆえなくかくれんぼの鬼


鶴見直斗

病床でいかに死ぬかと空見れば九月に死んだ君は答えず


橋本慎司

さよならだ待ってられない先に行くと火は燃えながら自ら死にゆく

それしても退屈だ。
少年と語り合う真夜中、なるほど、お前もそうか、と。
ぼくたちは退屈している。ぼくと少年は退屈している。

こんなに体は疲弊しているというのに。こんなに忙しいと言うのに、退屈なんだ。
なんだ、ここは。どこだ、ここは。誰がこんな退屈な世界を望んだんだ。
友人が、車に乗ってやってきた。

「あと5分で着くよー」とメールが来た。
自宅マンションの前で会った。「やっほー」と友人がやってきた。
二人、たばこを一本吸う間、話をした。それで十分だ。

「じゃねー、楽しんでねー」と友人は帰って行った。
それにしても退屈だ。
少年と語り合いながら、真夜中を待っている。

【撮影・平早勉】