劇団再生の理由とぼくの理由と外は雨

2008年12月9日 18:02:55


一瞬にして、

言葉がなんなのかわからなくなった。困ったな。
あれっ?と疑問に思った瞬間にその驚愕の想念がぼくを席巻した。
言葉って何だっけ?今まであれだけ真正面から向き合ってきたのに。
発狂寸前。
公演を終えて真夜中夜中。体温調整がうまくいかず、暑いなと感じ、ダウンを開いてバイクに乗った。
寒くて寒くて気持ちが良かった。
ここ数日まともに食べていなかったことに気が付いて、松屋。
おなかが空いていたわけではないけれど、本能かな。
真夜中夜中。店内のよっぱらいを愛おしく思いながら、食べた。
帰宅して、マシンを立ち上げた瞬間、わからなくなった。
言葉って何だっけ。

この稽古中に見え始めていた飛翔する画。
それは多分、来年の舞台の画だと思う。それが見えていて、
描きたいと思っていた。書きたい。万年筆のペン先を時間をかけて洗った。
本とに一瞬だった。

言葉が何なのかわからなくなった。


眠るべきだと思った。

眠くはなくても眠るべきだ。
まともな睡眠をとっていないじゃないか。寝なさい寝なさいときれいになったペン先。
でも、こんなに乱雑な部屋を見て眠れるわけがない。
ごそごそと片付ける。散乱するに任せた紙類。メモだの資料だの手紙類だの。
片っ端から捨てていく。落ちた髪の毛に脱力する。
なんでこんなに髪の毛が落ちてるんだ。いつの間に抜けたり切れたりしてるんだ。
真夜中夜中。かまわず掃除機を取り出す。

やっぱり体温の調整がうまくいっていないよう。
窓を開ける。


舞台の初日に鈴木さんから頂いた本を読んだ。

初日を終えて帰宅し、読み始めた。二日目に会場に行く前に読んだ。
会場に入ってから読み終えた。
あまりにきれいな随筆に鈴木さんに電話しようと思ったけれども、
そうか、今日も会うんだと思い直した。
鈴木さんと会ったら、その話をするのを忘れた。

公演が終わり、きれいに洗った万年筆にインクは入れられていない。


どうしたら形而下を取り戻せるんだっけ?

その問いを何度も繰り返す。
いつ形而下を喪失したんだっけ?
ラストシーンを書き終えた10月のあの日か。それとも稽古終了後に言葉を尽くしたあの夜か。
言葉を取りつくしたのかもしれないな。

新しい原稿用紙を開いてみる。


公演を終えて、たくさんの言葉をいただいた。

感想、批評、批判、提案。なるほど、と思うことばかりだ。
面白いな、と思う。お客さん一人ひとりの思うこと。

『LEON』を観た。
『昭和残侠伝』を観た。
『冬の華』を観た。
『SION』を聴かなかった。

あの日、形而上で爪を切ったというのに、いつの間にか爪が伸びている。
キーボードの音にノイズが混じる。困ったもんだ。
風呂に入ったりしたほうがいいだろう。
あったかいものを食べたりしたほうがいいだろう。

劇団再生が演劇をする。
そのことを考え続けている。
休まずに稽古をし続けることを考え続けている。
一人、か。一人、うん。
あれから一年。劇団再生が雨の歌舞伎町を発して一年。
どれほどの言葉と向き合ってきたのか。
いや、結局たった一言の言葉とだけにらめっこをしてきただけか。

『スーザンナ・マルガレータ・ブラント』
あの8文字だけで書ききればまた違った何かが生まれたかもしれない。
書きに書いた脚本。
当初2時間を越える作品だった。
削除に削除を重ねた。あの8文字を残して全部カットしたいと思ったんだ。

万年筆にインクをいれようかな。
それとももっと本を読むべきかな。
それとも一気にこやつのカタをつけてしまうべきか。


どこかを足がかりにしたほうがいい。

全くの一から、0から、ここを知るにはとてもじゃない体力がついていかない。
どこか足がかりを見つけよう。
段ボールを引っ掻き回し、本を取り出す。
太宰治。ぼくの原点なんだなと、表紙を見ながら、思った。
『人間失格』
読むのは何度目か。50回目か、あるいはそれ以上か。
今読んでどんな感想を持つのか。
太宰治を読んだ。

この原点が足がかりになるかどうか。
外は雨。濡れてみるのも一興。
体を痛めつけるだけ痛めつけてこそ見える何かがある。外は雨。
心を追い込むだけ追い込んでみるのも一興。
そうしなければならない理由もそんな日もある。雨か。

電話をしてみようかな。

(写真撮影は、全て平早勉さん)