そして、僕は、午前2時7分の僕を知る。
2008年4月14日 02:08:47
『天皇ごっこ〜思想ちゃんと病ちゃんと』
原作・見沢知廉、阿佐ヶ谷ロフト、その幕を閉じた。
恐ろしく感情の振幅の激しい二日間だった。
最大の喜びを得て、完全な疲労を得て、
不意に涙ぐみ、饒舌を抱え。
たった2回の本番。
ロフト史上初の本格的な演劇公演。
劇団側もロフト側も手探りの公演。
人間がそこに、居た。
未来、脚本家がここにいる。
今日の本番。
昨日と同様、会場は超満員となり、
定刻ぴったりに開演。
人間が、いた。
いなほ、照明さんは、ここだ。
僕は、音響卓を操作する。
観客の空気を読みながら、20曲の音を操る。
数cm横には、照明の若林恒美さん。
僕と同様に、フェーダを操る。
声を掛け合うこともない。
目を合わせることもない。
けれども、仕組まれたアリバイのように、美しく、
クロスがかえる。
直斗、会場がここにある。
始まって、十数分。
この一曲。
僕が、カットアウトしようとしていることを若林さんは、知らない。
演じている俳優も知らない。
後8小節だ。
稽古場でも、昨日も、この曲はフェードアウトしてきた。
今日、僕がそれをカットアウトすることを誰も知らない。
あと4小節。
けいこちゃん、みんながここにいる。
俳優の呼吸と会場の空気と台詞の速度と音楽のメロディ。
それらが一致するときには、
どんなにルール違反でも、カットアウトするべきだ。
あと2小節。
カットアウトすることは、僕しか知らない。
けれども、全員が感じている。
フェーダにかけている右手が緊張する。
カットアウト。
不意に途切れた音に、空気が一瞬揺れる。
完全な個人でなければ、誰とも、何とも繋がることができない、
と、はっきりと証明した公演。
人が、居た。
さとまり、音響さんは、ここだ。
完全無欠の孤独と完璧なつながり。
矛盾する同時性。
音楽のリズムに乗り、
メロディを操り、
マイクを片手に効果音をいれる。
たった一人の音響操作。
僕にしかできない、音響操作。
あゆ、演出家はそこにいる。
阿佐ヶ谷ロフトのスタッフの方々の驚異のその心。
約束をした。
劇団再生と阿佐ヶ谷ロフト、
一緒に育っていきましょう。
オーナーの平野さんは、急遽名古屋から戻られ、観劇された。
約束をした。阿佐ヶ谷ロフト、と。
間違いなく、人がいた。
田上、舞台は、ここだ。
舞台がはね、
会場を片付け、使った衣裳や小道具を家に運び込み、
驚異の夜を作ってやろう、今日は。
これを書き始めて、20分。
驚異の夜をつくろう。
そう決心する。
そのために、眠ることを拒絶した。