真夜中徹夜阿佐ヶ谷ロフト。ぼくたちは望んでここにやって来た

2009年8月21日 02:19:32

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『天皇ごっこ〜調律の帝国〜』原作見沢知廉という一本の演劇作品。
いつからこの作品に携わり始めたのか、つらつら思うに、定かではない。
原稿用紙にペンをいれた数ヶ月前、その時点で作品は出来上がっていた。
もっと前か。昨年の『天皇ごっこ〜思想ちゃんと病ちゃんと〜』を終えたあとか。
いや、違うな。もっと前だ。
見沢さんの三回忌追悼公演の時か。一昨年だ。その時点でこの作品のほとんどは見えていた。
もっと前だ。

おしゃべりな世界を怒鳴りつけ、決別しながら、時間を遡る。
お願いだ、静かにしてくれと、懇願しながら、見沢さんを遡る。

やっぱり、あの日だ。2005年9月7日。あの途方もない喪失感。
今でも思い出す。喪失の中で、空を見上げた。よく晴れた空を見上げた。
あの空の日から、ぼくは、この作品と歩んできた。
(ぼくが、見沢さんの言葉です)あの空に、そう言った。

真夜中だ。真夜中にも関わらず、ノイズが多い。うるせぇ! と舌打ちをする。

真夜中徹夜阿佐ヶ谷ロフト。
目の前では、舞台の準備が着々と進んでいる。
照明の若林恒美さんは空を見上げ、照明という星を静かに光らせる。
どんな一等星よりも光る星だ。
阿佐ヶ谷の地下劇場に、若林さんの空。

劇団員総出で準備を進める。
これぞ劇団再生だ、という時間が過ぎる。目の前にその時間が確かにある。
明日から本番。

ぼくが見沢さんの言葉です、と言った空が阿佐ヶ谷の地下にあるはずだ。
もう何年もこの作品と一緒に歩いてきた。

もう何年もこの作品と歩いてきた。
目の前の劇団員が忙しそうに働く姿を見ながら、ぼんやりと時間を遡る。

誰にも聞かれないように、そっと呟いてみる。
そこをどけ。
劇団再生が通るのだ。
邪魔だ。道を開けろ。劇団再生が通るのだ。

この拳銃が見えないか。

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