「落葉降り人に語らぬこともある」故野村秋介氏が詠んだ。死んだ者は語らない。だが、なぜこれほど雄弁なのか。
2009年10月20日 22:02:18
足を崩していつもの場所に座り込み、
右手で左側の首を触りながら、じっと。
16年前の今日、10月20日、野村秋介烈士が自決した。
野村秋介獄中句集「銀河蒼茫」に収められているたくさんの句。
春夏秋冬で部分けされている。冬から始まり、秋の部で終わる。
秋か、と、秋の句を一句ずつ目で追い、森田童子を聞きたくなった。
石廊を出て鰯雲「また秋か」
いつまでも鰯雲見てゐたりけり
落葉降り人に語らぬこともある
人の非は触れず落葉を掃いてをり
山茶花にこんな日本ぢやなかつたと云ふ
茫然と轟然と 秋の夕日墜つ
野村秋介という男の死、それを今でもはっきりと思い出す。
もちろん、「その場」に居たわけでは、ない。
「その時」にぼくが、何をしていて、何を考え、どう思い、そこから何が変わったか。
そんなことをはっきりと思い出す。
生活がとんでもなく、変わった。
180°の逆転を起こしたと言ってもいい。そのくらいの変化だった。
窓を開け放ち、空に黙祷。
空には、
奇しくも壮大に鰯雲。
くるくる回るレコード盤を眺めながら、じっと。
右手で首の感触にタナトスを感じ、
「銀河蒼茫」を読みながら、森田童子を聞き続けた。
昼日中、じっと。
森田童子をくるくる聴きながら、野村秋介「銀河蒼茫」を追い続けた。
いつものこの場所にだらしなく座ったまま。
レコードは、A面が終わり、ひっくり返しB面も終わった。
「GOOD BY」というアルバム。
またA面からくるくる。
玉川上水沿いに歩くと
君の小さなアパートがあった
夏には窓に竹の葉がゆれて
太宰の好きな君は 睡眠薬飲んだ
暑い陽だまりの中 君はいつまでも
汗をかいて眠った
あじさいの花よりあざやかに
季節の終りの蝉が鳴いた
君から借りた 太宰の本は
淋しいかたみになりました
ぼくは汗ばんだ なつかしいあの頃の
景色をよく覚えている。
森田童子がくるくる回る。
君から借りた太宰の本はさみしいかたみになりました
耳から離れず、森田童子がくるくる回る。