晴天、見沢さんと話す、また一人を知り、なるほど一人か、と呟いてみると、見沢さんは、ああ、と答えた

2010年3月19日 20:00:54

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毎月ここにやってくる。
どうしてか、なんて知ったこっちゃない。毎月見沢さんのお墓参りにやってくる。
三年か。見沢さん、三年、毎月いろんな話をしてるんですね。

文学や芸術、政治や思想の話はそういえばあまりしない。
なんの話をしてるんだろう。
女の話は案外してるかな。
金の話もしてるな。名誉に権力なんてことも。ぼくも見沢さんも煩悩まみれだ。
そしていつも帰り際にちょっとだけ人生の話を恥しそうに。
見沢さんが話したらないときは、立とうとすると卒塔婆がかたと鳴る。

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今月もこうしてやってきた。
お墓を洗う水もぬるみ、隅々まで磨きに磨く。
境内の梅も落ち、桜を待つ。

見沢さん、また来月来ますよ。いつものようにそう言って、立つ。
お寺さんを後にする。
そして、
また一人を知った。一人を信じた。一人を感じ、一人を見た。
なるほど、一人か、と呟いてみる。
卒塔婆がかた、と、後ろに聞いた。
いいだろう、見沢さん。見沢さんもか。見沢さんは恩返ししなくちゃ、と言ってましたね。
恩返しか。そんな言い方もあるんだな。
ようやくわかった。見沢さんの恩返しが、

何か。

なるほど、一人か。
ぼくも恩返しをしなきゃいけないんだ。
殺戮に殺戮を重ねる、それが恩返しだ。ぼくの言葉という言葉を殺しつくす。。
言葉阿鼻叫喚言葉圧殺言葉煉獄言葉地獄。
それを見せてやる。血まみれの言葉をお前にくれてやる。

なるほど、恩返しか。するさ、当たり前だ。恩返しをする。
だから、目を背けるな。

見沢さん、それを笑ってくれるか。
見沢さん、それを泣いてくれるか。

また来月。4月か。あったかくなって、きっといい天気だ。
女の話でもしましょう。金の話でもしましょう。