二十首詠『言葉の胸で銃を握るスズメ』

2010年6月18日 18:10:30

梅雨病演劇革命花一輪 神を撃ちたし病室に銃

薬にて眠りに落ちる悔しさに 一番遠くの音聞き反逆

落つ雨を数えるだけの先人を 笑い飛ばし涙流るる

言葉もて明日の質量計測す 新しき機械われの発明

よろよろと立ち入り禁止のドアは闇 なんだ演劇と同じじゃないか

柔らかき言葉の胸にいだかれて 眠りに堕ちるは我の弱さか

朝まだき己の生を飛翔する 小さき翼打ち振るスズメ

吾が生を閉じよときつく首に巻く ストールに降る言葉の香り

雨に問う言葉全てが降るならば 最後の単語それは何かと

一冊に閉じ込められし我が生に 叫び語れる舞台はありや

行方不明登場人物原稿紙台詞紛失それでも立つか

攫われし登場人物探し行く あてもなくただ升目を辿り

いつまでも重たき体に喝入れる 「機敏、機敏」と両手を伸ばし

風のない真白き部屋に香を運ぶ 窓際に揺れストールひとひら

一日中体に刺さりし管眺め 口の端あげるもうまく笑えず

ただ一つ残されし道は革命か 暗き院内目を閉じ歩く

ぽろぽろと落ちる薬液聞き数え 枕伝わる銃の冷たさ

西向きの窓に苛立ち爆破する 南に開きし穴こそ希望

見えながら何十年も見つけえず 言葉に会うため我が目を潰す

演劇の千年王国言葉もて 夢見し我はめくらのスズメ