二十首詠『両手を広げ、偽の履歴書』

2010年6月23日 14:41:10

永遠に読み終えない我の本 ポケットに入れどこにゆこうか

ひたすらに言葉を望み書き続け 2010年43歳

意味も無く煙草に火をつけ消えるまで 立ち上る煙見ているに一人

共に暮らすふくろうの胸に耳あて 強き鼓動に涙溢るる

逃げ出した登場人物どこにいる 吾はゆえなくかくれんぼの鬼

逃げ出した登場人物追いかける 言葉しかなし(笑)ただ寂し

何も無い何も無いと叫びながら ピアノを弾きし男は泣いた

新しき人生夢見し履歴書に 二月に生まれ真夜中に死す

武器を手に幕を開けろと叫びしも 観客席に人一人なし

・・・真夜中三首・・・

真夜中の痛みの霞に見つけえず 行方不明の登場人物

真夜中にさらわれし登場人物 どのつら下げて明日を望むか

真夜中に角の質屋で購いし 古き時計に夜明けは見えず

力こめ書けば書くほど矛盾する 何故だ! 寂寥鍵盤叩く

ポケットに詰め込めるだけの夜を入れ 我を出て行く鍵をかけずに

夜の滓に原稿の束沈殿す 上演されない我の演劇

原稿に閉じ込められし人物が 武装蜂起か言葉にアジす

数十年望み続け手に入れた 一行八文字闇に書きえぬ

書けども書けども書けども上演の 約束も無く舞台もない

本のみが我を救いし半生に 唾を引っかけ白紙の履歴書

頭上飛ぶふくろうの羽に憧れて 八階の空に両手を広げ