『罪と罰』の真夜中

2011年7月23日 23:21:44

『病的な状態で見る夢は、間々、異常に鮮明で、気味わるいほど現実に似通っていることがある。

時によると、奇妙な光景が描き出されるが、その夢ものがたりの舞台装置や筋のはこびが、

あまりにも正確で、しかもそのデテールがびっくりするほど細密で、唐突だが、

芸術的に絵全体が実にみごとに調和している。

それでその夢を見た本人が、たとえプウシキンかツルゲーネフのようなすぐれた芸術家でも、

現のときにはとても考え出せないというような場合があるものだ。

このような夢、つまり病的な夢は、いつも長く記憶にのこっていて、

調子をみだされてかぶった人間の神経に強烈な印象をあたえるものである。』

『<こうしずかなのは月のせいだな>

ふとラスコーリニコフは思った。

<月は、きっと、いま謎をかけているんだ>』

『おれは人間を殺したんじゃない、主義を殺したんだ!

主義だけは殺した、がしかし、かんじんのふみこえることはできないで、

こちら側にのこった……おれができたのは、殺すことだけだ。

しかも、結局は、それさえできなかったわけだ……主義はどうなるのだ?』

『だいたい新しい思想をもった人間はもちろん、

何か新しいことを発言する能力をほんのちょっぴりでももっている人間でさえ、

ごくまれにしか生れませんよ、不思議なほど少ないんです。』