2007年6月16日 22:15:57

先日、ある女優さんと歓談。
今はなき劇場に話が及んだ。
池袋文芸座ル・ピリエ、渋谷ジァン・ジァン・・・
20代と自分も若く、
そのエネルギをぶつけにぶつけてきた劇場。

目の前に書きかけの脚本、
万年筆、
火のついた煙草、
そして、真っ黒のコーヒー。

そうか、また、ここに戻ってきたんだ。
また、ここに・・・
自分の左右両翼、筋力は衰えてはいないか、

コーヒーを一口飲み、
そっと、翼を広げてみる。

と、後ろからコトバが、不意に。

「真似すんなよ!
飛ぶのは、俺たちの専売だ!」

そうか、また、ここにいるのか。
何度も何度も通ってきた、
「ここ」

コトバが続けてしゃべりかけてくる。

「大それた事を考えるな。
分相応ってことだな」

ああ、わかってる。
でも、その分ってのがよくわからないんだ。
コトバの攻撃をものともせずに、
翼を広げてみる。

一文字一文字、広げてみる。

一文字一文字、広げてみる。

広げた翼は、劇場を被い尽くすだろう。

この体長の何倍もある両翼が劇場を。